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祭祀財産の承継問題と遺言

■祭祀財産及び祭祀主宰者とは

祭祀財産とは、家系図、位牌、仏壇やお墓などを、祭祀主宰者とは、それらの祭祀財産を承継し、祖先の法事などの祭祀を主宰する者のことを指します。祭祀財産の承継及び祭祀主宰者については、民法第897条に定められています。

(民法第897条1項)
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。

 

これは、祭祀財産は相続財産のように分割して相続するのには馴染まず、祖先の祭祀を受け継ぐのが最適な者が承継すべきだからとされています。つまり、祭祀主宰者の指定が相続人ではなくとも、その者が最も適していれば、祭祀主宰者に指定することができます。

■事例

【ケース1】
高齢化が進んでいる現代では、祖父が亡くなった際、両親が存命でも、すでに高齢であるといった状況が考えられます。この場合、祖父の死によって高齢の父が祭祀承継者になったとしても、現実的に祭祀を主宰するのが体力的に困難なケースもあります。被相続人である祖父は、生前に孫を祭祀承継者として指定することができます。

 

【ケース2】
長男一家は海外で暮らしていて、数年に一度帰国する生活が続いている。長女一家は近所に住んでいるが、長女は身体が弱く、祭祀主宰者の任に不安があり、また長女の子供はまだ小学生である。このケースでは、直系親族の中で祭祀承継者を指定することが難しい状況と考えられます。しかし、もし長女の配偶者が祭祀承継者に相応しいと考えるならば、その者を指定することも可能です。ここで不安に思うのが、将来長女夫婦が離婚した場合、祭祀承継者は長女の配偶者のままなのかといった問題です。これに関しては、民法第769条1項で次のように定められています。

 

(民法第769条1項)
婚姻によって氏を改めた夫又は妻が、第897条1項の権利を承継した後、協議上の離婚をしたときは、当事者その他の関係人の協議で、その権利を承継すべき者を定めなければならない。

 

つまり長女の夫を祭祀承継者に指定したとしても、将来離婚した場合には、祭祀承継者を選び直さなければならないといった内容が法律で定められているのです。
氏の同一性について
民法第769条1項では、「婚姻によって氏を改めた夫又は妻が」と書かれているため、祭祀承継者となるには氏が同一でなければならないのかといった疑問が出てきます。これに関しては、氏が同じであることは必要ではないといった裁判所の決定があります。(大阪高裁昭和24年10月29日決定)

■祭祀主宰者の指定方法

祭祀主宰者の指定方法は、①被相続人による指定、②慣習による指定、③家庭裁判所による指定があります。このうちの①被相続人による指定の方法ですが、法律上、その方法、指定時期等に特段の制限はありません。生前でも、遺言書でも、口頭でも書面でも構いません。しかし、相続人の間で相続に関して意見の相違があった場合に、一方が「生前に被相続人から口頭で祭祀承継者の指定を受けていた」と発言しても、他方は納得できるものでしょうか。まず納得できないのではないでしょうか。やはり、死後の相続人間での争いを避けるためにも、遺言書に記載しておくことが望ましいといえます。

■遺言書に記載するには

前述したように法律上、祭祀財産は相続財産とは別の権利として扱われています。遺言書に「すべての財産は長男に」と記載したとしても、あくまでも相続財産と祭祀財産は別個のものなので、祭祀財産まで長男に相続させると解することや、祭祀承継者の指定があったものと解することは困難であると考えられます。祭祀財産の承継や祭祀主宰者を指定したい場合には、すべての財産で一括りにせず、相続財産とは別個のものという意識をもって、記載するようにしましょう。

 

相続では、被相続人の財産の分配方法や分配割合が問題になりがちですが、お墓や位牌など、ナイーブな点でのトラブルも実際には多々生じています。誰が祖先の祭祀を主宰するにしても、真摯な姿勢で祖先を大切にする気持ちがなければなりません。また、祭祀主宰者に指定されなかったからといって、祖先を敬う気持ちに欠けているといったわけでもないでしょう。誰を指定するにせよ、争いが起きないよう遺言書で作成し、さらに附言でその理由となる想いも残しておくことが望ましいと思われます。
当事務所では遺言書の作成に関し、豊富な経験から具体的なアドバイスをお伝えしております。作成すると決められた方、しようかなと検討中の方も、お気軽にご相談ください。

 

(執筆担当:谷 揚石)

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