遺言ノート
今さら聞けない『遺言作成の基礎』③~遺言書で遺産をもらうことを拒否することができる?~
遺言ノート
「財産をもらえるのに、なぜ拒否?」と驚く方もいるかもしれませんが、実は相続や遺贈には“断る”という選択肢があり、現実に放棄が選ばれるケースも少なくありません。今回は、包括遺贈と遺贈放棄の基礎、放棄されないための遺言書の工夫について解説します。
「すべての財産をあなたに」…でもその中に借金があったら?
たとえば遺言に「自分の全財産を、友人のAさんに遺贈する」と書かれていたとします。これは「包括遺贈」と呼ばれる方法で、包括受遺者は【相続人と同一の権利義務を有する】(民法990条)とされており、もらう側は家や預金だけでなく、もし借金があればそれも一緒に引き継ぐことになります。包括遺贈については、前回のコラムでも解説しています。
また、複数の人に割合で包括遺贈する(割合的包括遺贈)場合、具体的な財産は未定であるため、法定相続人と受遺者による「遺産分割協議」が必要になります。
このように、「このままだと借金まで引き受けそう」「知らない相続人と手続きを進めるのが不安」などの理由で、もらうのをやめたいと感じることもあるでしょう。
その他にも、以下のようなケースで放棄されることがあります。
- 誰も使わない空き家をもらっても、維持費や固定資産税の方が負担になる
- 遺留分を侵害しており、財産をもらうことで他の相続人との争いに巻き込まれたくない
- 遺言の内容からは財産の中身がよくわからず、借金がありそうで不安
- 相続人じゃない自分が、知らない家族と話し合うのに気が引ける
遺贈を拒否(放棄)するには?
包括遺贈を受けた人は、一部だけをもらうという選択はできず、全体を承認するか放棄するかのいずれかになります。放棄の方法は、包括遺贈があったことを知った時から3か月以内に、家庭裁判所へ申述をします(民法915条・938条)。
また、特定遺贈(例:〇〇の土地を遺贈する)の場合は、申述不要・期限なしで、放棄の意思表示のみで足ります。
放棄された財産はどうなる?
放棄された財産は相続財産に戻り、相続人による遺産分割協議の対象となります。
遺言で協議不要にしたつもりでも、その財産だけのために大人数の協力が必要になることも。また、相続人がいない場合、清算後は国庫に帰属します(特別縁故者がいない場合)。
放棄されないために、できる工夫
- 古くて維持費のかかる不動産をあげたいなら、管理費に足りるお金も一緒に渡す、もしくは生前に処分しておいたほうが残された人にとってはありがたいということもあるでしょう。
- 他の相続人の取り分が減る場合は、特に遺留分を侵害する財産を渡す場合には生前に話し合いの場をもつと安心です。場合によっては「遺留分の放棄」をしてもらうという方法もあります。
- 「全財産を・・・」では内容が曖昧になりがち。何をあげたいのかが伝わるよう、具体的に書く(特定遺贈)ほうが確実です。
- 万が一放棄されたときのために、「それならBさんへ」など第二候補を遺言に書いておくと安心です(これを「予備的遺言」と言います)。実務上は、予備的遺言を設定することが多く、第一順位に指定した人が遺言者よりも先に亡くなった場合などにも備えておくことができ、そういった場合に遺言書を書き換える負担もなくせます。
まとめ
遺言書は、ご自身の遺志を正しく実現するための重要な手段ですが、「もらう側」の事情や気持ちにも配慮することで、より有効なものになります。放棄のリスクを減らすためにも、内容の具体性と事前の話し合い、そして予備的遺言の活用をおすすめします。
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