遺言とは、自身の死後の法律関係に対して、自己の意思を表明する唯一の方法です。民法960条以下に作成方法などが規定されています。
遺言によって、財産上あるいは身分上の様々な行為が出来ますが、一般的には財産上の行為として遺言を利用するケースが多いのではないでしょうか。例えば、遺言者の財産を誰にどのくらいあげるか、を書いておくのが代表例でしょう。
人が死亡すると、例外なく相続が発生し、財産の一切が相続人に受継がれることになります。その時、遺言がなければ財産の配分方法(モノのまま分けるか、換価して分けるかなど)や配分内容(誰がどの財産をどれだけ相続するか)は全て相続人の話し合いで決まります。死亡した人はもはやあれこれ指図をすることは出来ないのです。
生前に、「自宅は妻に残したいな」とか「大切な腕時計は長男に受け継いでほしいな」などと思っていたとしても、それを表明しておかなければその想いは相続人には分かりませんから、相続人次第で異なる配分をしてしまうでしょう。また、相続人の一人に口頭で伝えていたとしても、死後、その想いに従うかどうかはやはり相続人次第であり、法的な強制力はありません。つまり相続人達が想いにそってすんなり話し合いがまとまれば良いですが、そうでない場合も実際にはたくさんあります。
そこで、遺言書によって、自己の財産について「どの遺産を」「誰に」「どれだけ」相続させるかということを自らの意思で生前に指定しておくのです。すると、遺言の記載が優先され相続人を法的に拘束しますので、あなたの生前の想いを死後に実現できるだけでなく、無用な争いを避けることができます。
遺言と聞くと、多額の財産がある人だけに関わるものと思いがちですが、「財産は自宅不動産と少しの預金」といったごく普通の家庭にも相続トラブルは起こりえます。むしろそれほど財産が多くないからこそ、生前の準備を怠っていて、ささいなことで泥沼のトラブルに陥ってしまうケースが多いようです。
そんなときに遺言書があれば、トラブルを未然に防ぎ、残される家族の負担を減らすことができるでしょう。